象は鼻が長い?

「象は鼻が長い」には何故主語が2つあるのか? 「象の鼻は長い」とどう違うのか? amteurlinguist が考える日本語の構文

1. スペイン語の助詞?

これは元は「スペイン語のあいうえお」の中の「寄り道」として書いた記事なのですが、少し手直して、今後書きたいと思っている「象は鼻が長い」の「前置き」に使う事にしました。

1.彼日本人です。
2.象大きい。
3.今日3月15日。
4.明日学校へ行く。
5.百合の花白い。
6.白い花要らない。
7.春曙。
8.花やっぱり桜だ。
9.私いいけど、あなたどうなの?
10.あなたが行くなら、私残る。
………

上の10の例文の内、太字で書かれた「」、これは日本語で助詞と呼ばれるものですね?
この助詞というの、他の外国語には余り出て来ない。少なくとも英語やスペイン語にはないですよね?
という事は、英語やスペイン語では、この「は」という助詞の働きを、他の品詞で代用してる訳で…

日本語の助詞「は」の働きのひとつは「主語を表す」だと思いますが、ここに出てくる「は」は、全部が全部、主語を表す「は」ではないですよね?

それから、1.の「私は日本人です」という文は、仮に「です」を省略して「私は日本人」と言っても、意味は通じますよね?
逆に3.の「今日は3月15日」に「です」を付けて「今日は3月15日です」と言っても、意味は変らない。2.と5.も「大きいです」「白いです」と言える。
でも4.や10.に「です」を付けて「行くです」「残るです」と言うと…かなり変?
6.7.8.9.はちょっとビミョーな所があるので…とりあえず置いときます。

で、結論から言うと、

上の10個の例文の内、1.2.3.5.の4つは、スペイン語に直すと「○○は~~」、つまり

「S は ~」

という文型の文になる。「S」は主語、「~」はその主語の属性を表す言葉で、一般に「~」には名詞や形容詞が入る。そして間の「は」のところに、英語の be 動詞に当る≪ser≫という動詞を置く事ができるような…

でも…

1.2.3.5.以外の「は」の所に英語の be 動詞やスペイン語の≪ser≫を置くと、ちょっと変な文になりませんか?

特に 4. とか 10. とか…

それは、これらの文の述語は主語の属性を表していないから、なのです。

英語の be 動詞に当るとされている「です」とか「だ」は、日本語では確か「助動詞」扱い? そして、日本語の中では多分比較的新しい言葉で(?)、「大きい」「白い」などという形容詞には、本来「です」は付かなかったのではないか?
例えば「空は青い」を過去形にする時、日本人は「空は青いでした」とは言わない。「空は青かった」です。日本語では「形容詞」が、英語の動詞のように活用してしまうのです。
それを、「英語の be 動詞」=「です」と覚えた外国人(?)が、「空は青いでした」と言ってしまうのを、聞いた事がないですか?(ちなみに、日本人が「です」付きで過去形を作ると、普通は「空は青かったです」…ですです)

余談ながら、日本人が外国語を話す時、この「空は青いでした」と言う外国人と逆のプロセスの間違いを犯してしまう可能性がある。
例えば上の 1.2.3.5 以外の日本語文を英語に訳す時、つい主語に be 動詞を付けてしまうというような…
これは日本人が、「は」という助詞には英語の be 動詞と同じ機能があると、無意識の裡に感じているからじゃないかと思うのですが。

言葉が違うという事は、単に同じ意味を表す「単語」が違うだけでなく、その「品詞」が違ったり、同じ事を言うのに、全然違う文の構造を考えなくてはいけなかったり、更に、もっと根本的な、「文法」が成り立っている元となる「考え方」のようなものが違ってたりするのです。

例えばスペイン語の形容詞は、活用しないところは英語と同じ。が、英語と違って性数変化をする。それが形容している名詞の性と数に合わせて、語尾が変化するのです。

で先に書いたように、上の10個の例文の内、1.2.3.5.の「は」は、スペイン語では ser という動詞に置き換える事ができ、これは英語の be 動詞に当るものですが、でも英語の be 動詞を全てこれに置き換える事はできない。何故ならスペイン語には be 動詞が ser の他にもあるからですが、その事については又後ほど…。

以上、「寄り道」、ではなく「前置き」でした。