象は鼻が長い?

「象は鼻が長い」には何故主語が2つあるのか? 「象の鼻は長い」とどう違うのか? amteurlinguist が考える日本語の構文

3. チガくない?

さて『2. 「好き」と「好く」』の最後に書いた「違くない?」はどこが面白いのか?
(これも「スペイン語のあいうえお」の寄り道として書いていたもので、編集途中で放ってあったら、「違くない」って表現も今じゃ古くなってしまった感じですが、まあ「ナウい」に比べると最近の言葉という事で…(・・;))

ここでも実は、「好き」と「好く」の場合と同じような事が起こっている。…というか丁度逆ですかね?
つまり「好き」は日本語では形容動詞(=形容詞というのは、前回説明しました)なのに、英語では "to like" という動詞。それに対して、「違う」は日本語では動詞なのに、多分英語の "different" のように形容詞にしちゃったらどうだろうって…ここで、え? 「違う」って形容詞じゃなかったっけ?って思った方、試しに「正しく」活用させてみて下さい。「違わない、違います、違う、違う時、違えば、違え! 違おう…最後のふたつ、意味的にはちょっとおかしいけれど、ちゃんと五段活用してますね? だのに形容詞(かろ、かっ、く…以下省略…)と同じように活用させて「チガくない?」ちなみにもうひとつ、昔の流行語だった「ナウい」は、本当は「ナウな」、つまり「な形容詞」(=形容動詞)で言うべきところを「い形容詞」で活用させちゃったところが、当時新しかったのです。
でも日本語の形容詞は、何故形容詞と形容動詞の2種類あるんでしょう? 実は形容動詞は、外来語だったと思われるフシがあるのです。
でも昔の話なので外来語と言っても英語じゃなくって、たとえば漢語とかですね。漢字の二字熟語で「な」をつけると形容動詞(=な形容詞)になって名詞を修飾する事のできるものは、元々は外来語だったのではないかという事です。それに対して、本来のやまと言葉にあった形容詞は、「い形容詞」って訳です。(「大きい」と「大きな」のように、一見両方あるように見えるのもあるけど…でも「大きな」は形容動詞のように活用しませんよね? これって何だろう??)
面白いのは、普段文法なんか意識してなくても、無意識の内にそういう事を捉えて区別しているという事。本来なら英語の "now" を外来語の形容詞として取り入れるには、「ナウな」となるべきだと無意識に感じているのに「ナウい」としたのが面白くて、当時流行語になった…という事は、普通の日本人は「外来語を日本語の形容詞として取り入れる時には形容動詞にする」というルールを、暗黙の裡に理解してるって事です。

ところで「い形容詞」だの「な形容詞」だのって言ってるけど、日本語の形容詞はほんとに形容詞なのか? 違くない?? という辺りを次回(…っていつ?)…