象は鼻が長い?

「象は鼻が長い」には何故主語が2つあるのか? 「象の鼻は長い」とどう違うのか? amteurlinguist が考える日本語の構文

5. 日本語の冠詞?

ところで二つ前の記事、『2. 「好き」と「好く」』で、「私は○○が好き」の例文の主語「○○」を「スペイン」にしたのは実は理由があります。

その理由とは、スペイン=España というのは国の名前、つまり固有名詞なので、冠詞を付けなくても良かったから…(同じく国の名前で固有名詞の「日本」には El Japón という風に冠詞が付いちゃったりもするのですが…)。

要は、逆に普通名詞だったら先ず、大抵の場合に冠詞を付けなくてはいけない。それを定冠詞にするか不定冠詞にするか、その説明が厄介なので、説明しなくてもいい言葉を選んだという事。

何故厄介か? …と言うと、定冠詞は特定のもの、不定冠詞は不特定のもの…なんて言われても、そもそも、特定、不特定って何よ? って思いません?

冠詞を付けるか付けないか、定冠詞にするか不定冠詞にするか、というのは、スペイン語をかなりやった後でも迷う事がある。そして迷った末にネイティブに相談しても、時には絶対的な答が返って来ない事も…

…それ位微妙なニュアンスなら、間違ってもいいんでは?

冠詞を付けようが付けまいが、或いは定冠詞だろうが不定冠詞だろうが、はっきり言って、どっちでもいいんでは?? (…ブツブツ…)

…と思ったあなた。はい、間違えても大した影響のない場合、そしてネイティブだって迷うような、つまりどっちでもいいような(?)場合もあります。

でもたとえば日本語で…「空は青い」と「空が青い」では、「空」のニュアンスがちょっと違ってませんか?

冠詞を付けるかどうか、或いは定冠詞にするか不定冠詞にするかの違いって、そんな感じだと思うのですね。

そして、日本語には冠詞はないけれど、その働きを一部、助詞の「は」と「が」の使い分けで代用してる所があるような、そんな気がする事がある。

上のふたつの例がどう違うのか、そして「は」と「が」をどう使い分けるのか、日本語のネイティブでも説明が難しいでしょう?

でも日本人なら自然に使い分けている…そんなもんだと思うのです。

…で「空は青い」と「空が青い」では、どっちの「空」が定冠詞、つまり特定の空で、どっちの「空」が不定冠詞の付く、或いは冠詞が付いてない不特定の空??? (冠詞が付いてない時というのは、どっちかというと不定冠詞の感じなのです。}

どっちの「空」が "el cielo" で、どっちの「空」が "un cielo" ですかね…
("cielo"=「空」は男性名詞の単数形で、"el" と "un" はそれに付く、それぞれ定冠詞と不定冠詞。)

……
…………
ちょっと考えてみたのですが、結論は出ませんでした。
何となく「が」が不定冠詞、そして「は」が定冠詞というような感覚があるのは、スペインの語学学校の授業で、最初に何かが出て来る時(例えば「(机の上に)本がある」というような文における『本』には)不定冠詞が使われる、それに対して『(机の上にある、その)本は面白い』というような時には定冠詞が付く…というような説明があったような、なかったような…かなり遠い記憶があるからでしょうか?

で改めてスペイン語の例文を検索してみると、不定冠詞の付く「空」という言葉が使われている例文は、ことごとく「ある」という動詞とセットになっている。
例えば「灰色の雲の上には常に青い空があるだろう(Arriba de las nubes grises siempre habrá un cielo azul) 」というように。

一方で、「雲の向こうでは空は常に青い("Más allá de las nubes, el suelo es siempre azul")」という時には定冠詞が使われている。

これは「ある」という動詞がかなり特殊な動詞である事とも関係しているのかも知れない。

不定冠詞を伴う「空」という単語を主語として、「空が青い」("un cielo es azul")というような文は、仮に文法的には可能だとしても、余りスペイン語的ではない(suena un poco raro)という事は言えそうな気がします…